【意外と知らない!?】入院中の個室料金を払わなくていい場合があるって本当?

医療のお金

〇入院時の差額ベッド代ってなに?

入院中にかかる差額ベッド代とは、正式名称を「特別療養環境室料」といい、いわゆる大部屋以外の病室またはベッドの使用料金となります。これは基本的に患者の希望によって選択されるものであり、健康保険は適応されません(全額自己負担です)。このページでは以下差額ベッド代と表現していきます。

差額ベッド代を払うと大部屋で過ごすよりも快適に療養生活を送ることが出来ます。厚生労働省の通知により差額ベッド代をとることのできる条件が大きく4つ定められており、無料の部屋に比べ1部屋あたりのベッド数が少なく(4床以下)、面積も広く(6.4平方メートル以上/1人)、プライバシーの確保が出来る空間で「個人用の私物の収納設備」、「個人用の照明」、「小机等及び椅子」が備え付けられています。

〇差額ベッド代を支払わなければいけないのはどんな時?

さて差額ベッド代は上記に示した通り、患者の希望によって選択され支払われるものです。病院側から設備や料金等についての説明を受け同意書にサインすることにより支払い義務が生じます。この同意書は患者の希望が説明時にあったという証拠になりますのとても重要です。

〇差額ベッド代のかからないときってどんな時?

しかし個室などの差額ベッド代のかかる部屋に入院した時でも減免(差額ベッド代の免除)となる場合があります。そもそも厚生労働省では以下のようなケースでは差額ベッド代は請求してはいけないと示しています。

①同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)

②患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合

③病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

この②③については特に判断に迷ったり、うっかり同意書にサインしてしまいがちです。具体例を挙げながらそれぞれ詳しくみていきましょう。

〇「②患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合」とは?

それでは患者本人の治療上の都合により差額ベッド代のかかる部屋に入院する場合とは具体的のどのようなケースなのでしょうか?

例1) 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者 :例えば化学療法や免疫抑制剤の使用により免疫力が低下し、易感染状態にある場合に病院では感染症の罹患を予防するため陰圧設備のある個室やアイソレーターの使用を行います。その際に個室を利用するときには患者の希望ではなく、基本的に治療に必要な管理上の都合として個室を用いるため差額ベッド代は不要となります。

例2)救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者 :例えば大きな手術で術後の急変リスクが高く、頻回な処置や観察を必要とするためにスタッフステーションにより近い個室に移動したor術後にせん妄を発症したためスタッフが安全の確保をしやすいよう個室に移動した場合です。これらの場合では病状や急変リスクに対して治療として安静が必要であり、患者の身を守るために常時の監視が必要ですので条件を満たしており差額ベッド代は不要となります。

例3)集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者 :例えば集中治療のために必要な機械やモニター類が多く大部屋だと十分なスペースの確保、設備がない場合が該当します。病状が重篤であるほど比例して点滴のポンプや心電図のモニターなどなど機械を用いることが増え、スペースが必要となります。造りの古い病院では人工呼吸器などの機械を接続する酸素/吸引/空気の配管の都合上で部屋を変更することもあります。また終末期の患者では身体的・精神的苦痛の緩和を目的とし家族が時間を問わずに面会や付き添いを出来るよう医療者の判断で個室に移すことがあります。この場合でも医療者の判断による移動のため差額ベッド代は不要となります。

〇「③病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合」とは?

こちらについても同様に具体例を挙げてみていきましょう。

例1)MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者 :院内感染を予防するためにいくつかの感染症が該当しますが、最近では新型コロナウイルスで該当する場合が多かったかと思います。入院時に陰性確認ができるまで個室管理と言われ、確認後に大部屋に移った場合は差額ベッド代は不要です。あくまで病院側が感染拡大リスクを防ぐために病院のルール・病棟の管理の必要性により個室に入れているので患者に支払い義務はありません。

〇他にもある差額ベッド代でもめるケースって?

上記にあげたように差額ベッド代を支払わなくていいケースについては厚生労働省が示していますが、他に病院側と差額ベッド代の支払いについて相談がよせられるよくあるケースを2つ挙げておきます。

例1)入院時に大部屋を希望したが病棟に個室しか空きがなく、料金がかかると説明された :この場合でどうしても差額ベッド代を支払いたくない場合には①大部屋が空くのを待ってから入院、または②こだわりがなければ大部屋に空きのある他院を紹介してもらい入院することとなります。ただしこの方法がとれるのは急を要しない、スケジュールの変更がつく場合のみです。手術目的や仕事の都合などでスケジュールの再調整が難しい場合には、差額ベッド代を支払って個室に入るとともに病棟スタッフに大部屋が空き次第そちらに移りたい希望を伝えておきましょう。時折病院によっては経済的事情を鑑み、差額ベッド代の免除や減額を配慮してくれることもありますが、基本的には大きなトラブルに発展しないよう病院側と相談し柔軟な対応をとることが大切です。

例2)大部屋に入院していた家族がせん妄を発症し、同室者から苦情が来ているため個室に移したと説明された :これは難しいケースですが医療者側が他患者の療養環境を守るために判断し移動後の相談であった場合では厚生労働省の示す「③病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合」に該当するため差額ベッド代の支払いは不要であると考えます。しかし、同じケースであっても医療者より「他患者よりクレームがでているため個室への移動をお願いできないでしょうか?」と相談があり希望した場合には患者の希望によるもののとされ、差額ベッド代の支払いが必要であると考えます。

〇快適な入院生活を送るために・・・

差額ベッド代はより快適な療養環境を送るために患者の希望でとられる料金になります。患者の同意なしに料金を発生させることはできません。希望しないのであれば病院側の説明をしっかりと聞き、同意書にサインしないことが大切です。

しかし実際には大部屋に空きがない、入院している家族が周りに迷惑なく過ごせないなどの理由でサインが求められることもあります。お世話になっている医療者側ともめるようなことは避けたいところだと思いますので、冷静になりつつもその時その時の状態を見極めた判断が必要になってきます。

厚生労働省の提示する差額ベッド代に関する指針文書へはおにぎりイラスト↓をクリック!!

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